CBOのスケッチブック

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Aの思い出

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 トランプ大統領の関係の報道を見るたびに、思い出すのはA課長のことです。

 ボクの働いていた職場は、会社の製品に組み込む部品の製造工場でした。製品の心臓部に相当する部品なので自社で作ろうというわけで、ボクの入社した頃に試作が始まりました。その後、なんとなく試作を続け、なんとなく夜勤も始まりました。土日は休みで、月〜金は24時間稼働でした。

 そしてある時、会社から土日も含めた連続操業の提案がありました。ちょうどこの時期に、ボクは労働組合の役員をしていました。提案された交代勤務の条件の厳しさから、職場は猛反対。しばらくこう着状態でした。ボクは板挟みで苦しみました。

 仕切り直しでは、まず管理職の異動がありました。職場の評判の悪かったT課長は去り、新たに送り込まれたのがA課長でした。

 A課長はすぐに、「◯月から連続操業を開始する」と宣言したものでした。職場は大騒ぎ。ボクは高みの見物。あとで、組合の委員長の言うには、A課長の作戦は見事だったようです。つまり、大騒ぎのなかで、特に手強い数名が浮かび上がり、そこを集中的に攻めて文句を言わせないようにしたとか。同時に、交代勤務の条件をマイルドにしたそうです。ボクの高みの見物も実は(A課長とぐるの)委員長の指示によるものでした。声を掛けるまで組合は職場に来てはいかんということだったようです。

 その年の夏頃、組合に声が掛かり、ボクが職場の組合員を集めて職場討議を開きました。「(会社提案で)いいですね?」というボクの問いかけに、皆さんは黙ってうなずくばかりでした。A課長の宣言より少し遅れたものの、連続操業は開始されました。

 ボクの知った情報と邪推を総合すると、この連続操業騒動の発端はM専務の意地だったようです。代表権まで手中に収めたM専務が目をつけたのが、なんとなく試作しているわりには金を使うボクの職場だったのです。しかし、創業家のご意向で、お取り潰しは相成らぬとなり、意固地になって、高価な製造装置を揃えているからには、連続操業のひとつでもやってみろという感じになったのでしょうか。事業の計画上の必然性とかは全く無かったようです。最初の会社提案の時に、職場の組合員や上司の双方から罵詈雑言を浴びたボクは何だったのでしょうか。

 A課長はすぐに去りました。こんな職場に長居は無用という感じでしょうか。そして、肝心の連続操業も、ちょうど一年で終わり、元の土日休みの夜勤に戻りました。

 最初にがーんと衝撃を与え、飛び出してくるやつを個別に叩き、少しマイルドにして飲ませるというA課長の作戦と、トランプ大統領のやっていることが似ているような気がして、20年程前のことを思い出しています。

 

 何年か前に描いた高梨さんの絵は、文とまったく関係ありません。資生堂が組んだとかで、この頃とは見違えるようになった高梨さんですね。